試合結果
帝京大学 35-17 早稲田大学
1st Scrum 7:24〜
ハーフライン付近、早稲田大学ボールのスクラムです。
組み直しが多く、どれを1st Scrumと捉えるか凄く迷いました。
そのため、7:24〜を1st Scrum、10:31〜をPickup Scrumとして取り上げる事にします。
セットアップから見ていきましょう。
早稲田大学は、HOがセットした位置に両PRが寄ってバインドしています。
注目したいのは、HO 清水選手の背中の寄り具合です。
腕を横に伸ばす場合、背中が寄せにくいのですが、綺麗に背中が寄っています。
そうする事で、両PRを寄せつつ、自分も胸を張る事が出来るため、相手HOを押さえ付ける事が出来ます。
また、清水選手の場合は、寄せながら低くなっているため、両PRより肩1個分下にセット出来ています。
HOは、スクラムの最深部にいるため、スクラムの舵取りを担うポジションです。
そこの勝敗がスクラムに大きく影響するのは、何となくイメージが付きますよね。
だからこそ、HOは低さを求められるのですが、ここまで綺麗に低くなる選手はあまり見た事がありません。
これに対抗しようとすると、頭が下がるか、低さを保ち切れずに顔を上げるかのどちらかになるでしょう。
余談ですが、管理人の後輩に、背中の寄せが綺麗な選手が居ましたが、非常に組みやすかったです。
通常のバインドと比べて、フロントローがより密着するので、自立したセットアップが出来ます。
3人寄れば、必ず自立出来ます。
まとめると、胸を張り、肩が後ろに回る分だけ、両PRがより自分の近くにセット出来るので、密着感が生まれます。
対して、帝京大学 HOも腕と背中を使いながら、両PR寄せていました。
ただ、肩が前に入り込んでおり、バック5の押しが来た時にコントロールしにくい印象を受けました。
また、バインドを持ち直している事から、ヒットの段階で緩みそうでした。
バック5は、早稲田大学が両フランカー角度を付ける扇の形、帝京大学は1番側のフランカーが半歩前/3番側のフランカーが少し角度をつけてセットしていました。
どこかで似たようなセットアップを見ましたが、忘れてしまいました。
1本目は組み直し、2本目は組み合う事が出来ました。
バインド時に帝京大学が圧力を掛けており、センターラインギリギリまで前に出ています。
その状況でも、ヒットは互角でした。
要因は複数ありますが、早稲田大学HO 清水選手がヒットの前に、右足を下げられた事が大きいでしょう。
ルール上、ブレーキフットは残しておく必要がありますが、最初セットした位置から下げるシーンは何度も見てきました。
ここら辺、知り合いのレフリーに確認する必要がありますが、正常なスクラム運営が出来ているなら、特段反則を取られる事は無いと考えています。
足が1本多いだけですが、しっかり帝京大学の重さを受け止めています。
また、先程から繰り返し伝えている通り、早稲田大学の密着感が素晴らしいので、力を漏らさず受け止められたのかなと感じてます。
組み合った後、帝京大学 1番がアングル気味/3番が内→外に圧力を掛けています。
ただ、HOが1vs1の勝負で負けており、身体が浮き上がっています。
帝京大学としては、HOと3番で早稲田大学 HOを挟み込み、下から突き上げる形で身体を浮かせたかったと考えてます。
実際は、下から帝京大学3番→早稲田大学 HO→帝京大学 HOでした。
この状態で、後ろからの圧力が拮抗して、方向が上に変わるため、押し切れずに顔を上げてしまいました。
帝京大学 3番森山選手のみ低い状態を保てており、ここに1番・HOが付いて来れたら凄く良い形でした。
上がってしまったので、2本目も組み直しです。
3本目は、ヒットの後からボール投入までに、帝京大学が外側へ流しすぎたため、組み直しとなります。
身体の向きが1時の方向に揃っており、意図的に外側へ圧力を集めたと考えています。
帝京大学 3番森山選手の外への張り方・身体の向きは、凄く参考になりますね。
PNC(パシフィックネーションズカップ)には呼ばれていませんが、RWC2027に向けて日本代表に絡んで欲しいですね。
今回の場合は、組み合った後に前ではなく外側に流れてしまった点を修正したいです。
ここまで1st Scrumでした。
次に、仕切り直しのPickup Scrumを見ていきます。
Pickup Scrum 10:31〜(1st Scrum仕切り直し)
ハーフライン付近、早稲田大学ボールのスクラムです。
1st Scrumで3本組み直しとなり、レフリーから指摘を踏まえた上のスクラムでした。
組み合った後、2本目と同様に帝京大学が前に圧力を掛けるも、地面に膝を突きながら前に出たため、ニーリングの反則を取られました。
セットアップは1st Scrumで解説した通りです。
1st Scrumと違ったのは、帝京大学 HOもブレーキフットの足を下げていました。
帝京大学がより前に圧力を掛けやすくなり、バインドした時点では、早稲田大学が少し後ろに下がりました。
その圧力に対して早稲田大学は、足を下げずに、股関節を使って圧力を吸収しています。
結果として、ヒットが互角になりました。
ヒット後は、帝京大学が1時の方向に圧力を掛けますが、3番が前に出ている所に、1番・HOが付いていけず、崩れてしまいました。
早稲田大学 HOが帝京大学を分断するように組んでいるため、上手く押し切れなかったと感が得られます。
早稲田大学 HO清水選手、帝京大学 3番森山選手の良さが光ったスクラムでした。
Best Scrum 23:27〜
早稲田大学陣10m上、早稲田大学ボールのスクラムです。
組み合った後、帝京大学が前に圧力を掛けてスクラムが崩れたため、早稲田大学がコラプシングの反則を取られました。
試合を通して反則に苦しんでいましたが、このスクラムは、帝京大学の力強いスクラムが見られましたね。
今回注目したいのが、帝京大学フロントローの立ち位置です。
通常であれば、フロントローの立ち位置は揃っている事が多いです。
京都産業大学のようなオーバーハンドバインドの場合は、3番が前に出る事もありますが、基本的には立ち位置が揃っています。
今回の帝京大学を見てみると、1番側がHO・3番に対して半歩前にセットしていました。
スクラムの構造上、後ろに下がりやすい1番を敢えて前にしている点で、非常に興味深いです。
管理人もコーチングするチームに対しては、1番を前に立たせる事を意識していますが、ここまで際立った立ち方を見るのは初めてです。
結果として、ヒットの勢いそのままに帝京大学が前に出てスクラムを崩しています。
3番側が真っ直ぐもしくは外側に張るのが前提ですが、1番側が半歩前に立つ事でより1時の方向に圧力を集めやすくなります。
また、相手3番と距離が近くなるので、身体を動かす空間が少なくなり、組み辛さを演出できます。
大学カテゴリーを見ていると、内側に入る3番が多いため、このセットアップが非常に有効的である事が証明されました。
対抗するには、帝京大学のように外側に張るか/真っ直ぐ間を割りに行くのが得策でしょう。
Pickup Scrumでも、早稲田大学が内側を向いている事から、帝京大学が上手く順応して、対策した結果だと考えられます。
セットアップには、それぞれメリット・デメリットがあります。
それを意識して自分達はどのセットアップを選択するか考え抜きたい所です。
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