本日のテーマ
本日はNTT JAPAN RUGBY LEAGUE ONE2023-2024 D1 PO準決勝 埼玉パナソニックワイルドナイツ vs 横浜キヤノンイーグルスの試合を解説していきます。
昨年同様、レギュラーシーズン1位通過の埼玉パナソニックワイルドナイツと4位横浜キヤノンイーグルスの対戦でした。
横浜E強かったですね。
2期連続のPO進出、チーム力が向上している事の裏付けでしょう。
ただ、それ以上に埼玉WKが強かったですね。
王座奪還に向けて全勝優勝なるか、決勝戦のBL東京戦も期待しています。
個人的には、両チーム共にHIAで退場する選手が多く、心配になる場面が多かったです。
それでは、試合結果・1st Scrum・Best Scrumを見ていきましょう。
試合結果
埼玉パナソニックワイルドナイツ 20-17 横浜キヤノンイーグルス
埼玉パナソニックワイルドナイツ 326kg / 885kg
横浜キヤノンイーグルス 310kg / 883kg
1st Scrum 14:25〜
気になる1st Scrumは14:25〜です。
ハーフライン付近(横浜E陣)、埼玉WKボールのScrumです。
前節からメンバーが変わった影響により、フロントロー体重では埼玉WKが16kg優勢、バック5は横浜Eが14kg優勢でした。
組み合った後、お互いプレッシャーを掛け合いますが殆ど動かずボールアウトとなりました。
今回面白いなと感じたのは、セットアップ時の足の動きです。
古瀬レフリーが右足でポイントを示してから埼玉WK 坂手選手と横浜E 庭井選手、2人合わせて4回動かしています。
足を動かすのは勿論自分達が組みたいScrumを組む為なのですが、動かす方向に違いがありました。
埼玉WKは相手の重たいバック5を警戒した上で、自分達のセットアップに集中する為一歩後ろに足を下げています。
対する横浜Eは、最初足を置いた位置に対して埼玉WKが重ねるようにセットしてきたため、スロットをズラす事を目的として半歩左側にズラしています。
その上で、間合いが通常より遠くなってしまったので、1/4歩前に詰めています。
組みやすい・組み辛い間合いは個人差があるので一概に言えませんが、自分が重さで有利な場合は間合いを詰めた方が組みやすくなる印象です。
逆に、ヒットスピードに自信がある場合や密着しながらヒット出来る場合は少し間合いを遠くした方が組みやすいでしょう。
また、相手との立ち位置をズラす事で2対3の状況を作り出す事もできます。
セットアップに戻ります。
フロントローがセットする際に、埼玉WKは1番ペレズ選手の身体の向きが真っ直ぐになるように、肩を出しています。
横浜Eがスロットを左側にズラして1番とHOの間を割りに来ると予想した結果だと考えています。
これまでは1番側の肩がHOの脇に隠れてしまい、身体が1時の方向に傾く場面が多く見受けられました。
そのため、スロットをズラされた際に左肩が先行してしまい、よりHOとの距離が空いてそこを攻められています。
その部分を修正して来たのかなと考えています。
対する横浜E側のバインドは、3番杉本選手側を握り直していることもあり、いつもより緩く感じました。
HO中村選手・3番祝原選手の時と同様に、イン組を試みるのであれば、より密着度に関して気に掛ける必要があります。
もしかすると、先発するフロントローや相手に応じて、組み方を変えているのかも知れませんね。
全試合見れた訳ではないので、今後の研究対象にしていきます。
ヒットはほぼ互角でした。
埼玉WKが斜め下側に圧力を掛けてきたのに対して、横浜E側は真っ直ぐヒットしています。
埼玉WKの組み方であったり、ヒット時の膝の伸び具合など、参考になる部分が多いです。
バック5の重さで勝る横浜Eでしたが、膝が鈍角であり、ヒットで前に出られる余地が少ない印象です。
物凄く細かい部分ですが、Scrumを優位に進めるために必要な要素だったなと考えています。
お互いのフロントローが良い姿勢を保てている状態だとしたら、バック5の押しで勝敗が決まります。
1st Scrumから勢いに乗りたい横浜Eを真っ向から受け止めた埼玉WKでした。
Best Scrum 25:25〜
気になるBest Scrumは25:25〜です。
横浜E陣22m内、横浜EボールのScrumです。
組み合った後、埼玉WKが3番藤井選手を軸に前に出て、イリーガルホイールの反則を獲得しました。
イン組が流行る中、綺麗な3番主導の外張りScrumでした。
現役時代何度も憧れたScrumですし、コーチとしても理想の形だと考えています。
3番主導で外張りに出るために、重要なのはHOの選手です。
今回は埼玉WK 坂手選手の動きに注目していきましょう。
それまでのScrum同様にセットアップをしたと思われますが、今回はクラウチの段階で少しだけ低くなる事が出来ました。
普段よりワンテンポ早く下ろしたからなのか、理由は定かではありません。
普段のScrumより良い位置、具体的には相手の鎖骨から胸の間にセット出来ています。
そうする事で、相手HOに対して下から↗️に突き上げるように圧力を掛けられます。
ヒットしてから一段と密着度が高まった点も良かったですね。
背中の寄せ具合も素晴らしいですし、腕と背中の両方を使って寄せている事が分かります。
肩が内側に入らず、胸で横浜E 庭井選手を抑えながら両PRを寄せています。
堀江選手が引退を表明してから一段とScrumでの存在感が出てきた気がします。
また、埼玉WK 1番側ペレズ選手の組み合った後の対応力も良かったですね。
セットアップの段階では、横浜Eがズラしていた影響なのかスロットを上手くズラされている印象です。
また、ヒットの段階では身体が半身分外側に出ており、Scrumが時計回りに回転しそうな状況でした。
ヒットでもあまり前に出れておらず、横浜Eの重たいバック5の圧力をモロに受けている印象です。
ただ、姿勢が崩れず身体が正対した状態で真っ直ぐ組む事が出来ています。
組み合った後、HO 坂手選手がアングルを12時から1時に変更した際に、左足を内側に寄せて前に出られています。
左肘の動きを見てると、何度も地面に対して垂直方向に向く場面があり、Scrumを崩しそうな雰囲気があります。
それでも、圧力に耐え切り前に出る事が出来ています。
欲を言えば右足から前に出たい場面でしたが、外側に割れず前に出られた事が素晴らしかったです。
その要因として、3番藤井選手が横浜E 1番を外側へ弾いている上、横浜E 3番杉本選手の身体が内側に傾いています。
そのため、ペレズ選手から見て右側からくる圧力が小さかった事が挙げられます。
正直、ペレズ選手のScrumについて、あまり良い印象がありませんでした。
今回のScrumを見て、次世代のPR争いに名乗りを上げたのかなと考えてます。
LeagueOneが終われば代表合宿に移ります。
PO進出の4チームから誰が選ばれるか楽しみです。
まとめ
本日はNTT JAPAN RUGBY LEAGUE ONE2023-2024 D1 PO準決勝 埼玉パナソニックワイルドナイツ vs 横浜キヤノンイーグルスの試合を解説しました。
選手の皆さんは、自分達のセットアップ、その上で相手の組み方に対してどうすれば自分達が有利に進められるか考えられるとScrumが楽しくなります。
観戦される方は、Scrumがどのように動いたのか、何故そのように動いたのか分かると、よりラグビーが楽しくなるのかなと思います。
更新できなかった試合の方が多いシーズンでしたが、本ブログを通してそのお手伝いが出来れば幸いです。
LeagueOne閉幕後は大学ラグビーとテストマッチを中心に、ScrumReviewを更新します。
Scrumが分かれば、ラグビーはもっと楽しくなります。
読者の皆さんがScrumを理解して、ラグビー観戦がもっと楽しくなるように発信していきます。
本日もご覧頂きありがとうございました。
また次の記事でお会いしましょう。
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